うりずん※の頃になると、船浮の裏山の竹林でリュウキュウチクの竹の子が採れます。西表島に数種類ある竹の子の中でも、断トツの一番人気で「売るより食べたほうがいい」と、島内で消費され、市場に出回ることがありません。
それもそのはず、この細めのリュウキュウチクの竹の子は、たいへんな思いをして採ってきた割には、食べられるところが少ないのです。
山から俵袋いっぱいに収穫し、担いで山からおろし、下処理をします。まず、皮をむきですが、この皮むきは収穫した時間の倍を費やすとても手間のかかる作業です。次に、竹の子の大半を占める食べられない節の固い部分と、食べられる柔らかい部分を切り分け、湯がきます。それを炒めると、手間暇かけた割には少量しか食べられません。「少ない割には値段が高い」と思われるより「自分たちで美味しく食べた方がいい」となるわけです。
※ウリズン(陽春)
3〜4月(旧暦の2〜3月)頃、春分から梅雨入りまでの時期。1年で最もさわやかな時期で、雨が降り大地が潤い、作物の芽が出はじめます。語源は「潤い初(ぞ)め」。